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感情や思考に振り回されないために:心の動きを客観的に捉えるヒント

Tags: 感情, 思考, 客観視, セルフケア, 自己理解

日々の感情や思考に、なぜか疲れていませんか?

私たちは、仕事や人間関係、将来のことなど、様々な場面で感情を抱き、考えを巡らせています。時にその感情に圧倒されたり、頭の中で考えが堂々巡りしてしまったりして、気づかないうちに心が疲弊していることがあります。

「なぜこんなにイライラするのだろう」「また同じことばかり考えてしまう」と感じる時、私たちはその感情や思考そのものに深く入り込みすぎているのかもしれません。まるで、自分自身が感情や思考そのものになってしまったかのように感じることがあります。

この状態が続くと、心の余裕がなくなり、目の前のことに集中できなかったり、漠然とした不安感が募ったりすることにつながります。では、どうすれば、こうした心の動きに振り回されすぎず、穏やかに過ごすことができるのでしょうか。その一つの方法として、「感情や思考を客観的に捉える」というアプローチがあります。

感情や思考に「振り回される」とはどのような状態か

私たちは、目の前の出来事や頭に浮かんだ考えに対し、自動的に感情や思考が生じます。例えば、仕事でミスをした時に「自分はなんてダメなんだ」という考えが浮かび、それによって落ち込む、といった流れです。

ここで問題となるのは、その「考え」や「感情」を、まるで自分自身の全てであるかのように受け止めてしまうことです。「自分はダメな人間だ」という考えが、あたかも揺るぎない事実であるかのように感じられ、その考えから生まれたネガティブな感情に心を支配されてしまう状態です。

感情や思考は、私たちの心の中で一時的に生まれるものです。しかし、それに同一化してしまうと、まるで感情や思考という名の濁流に巻き込まれてしまったかのように、冷静さを失い、適切な対処が難しくなります。

心の動きを「客観的に捉える」とは?

感情や思考を客観的に捉えるとは、それらを「自分自身」と同一視せず、心の中で起こっている一つの現象として眺めることです。

例えるならば、川の流れを川岸から眺めるようなイメージです。川には様々なものが流れてきます。葉っぱや枝、時にはゴミなども流れてくるかもしれません。私たちはその流れを、ただ「流れているな」と観察します。その流れに乗って一緒に流されてしまったり、流れてくるもの一つ一つに過剰に反応したりはしません。

心の動きもこれと同じように、頭の中に浮かぶ思考や、胸の中に湧き上がる感情を、「ああ、今、こういう考えが浮かんでいるな」「ああ、今、こういう感情を感じているな」と、一歩引いた視点から静かに観察することです。

なぜ客観的に捉えることが大切なのか

感情や思考を客観的に捉える練習をすることは、以下のような点において、心の負担を減らし、安定を取り戻す助けとなります。

どうすれば感情や思考を客観的に捉えられるのか:具体的なヒント

心の動きを客観的に捉えることは、少し練習が必要ですが、特別なスキルは必要ありません。日常生活の中で意識できる簡単なヒントをいくつかご紹介します。

ヒント1:まずは「気づく」ことから始める

感情や思考を客観的に捉える第一歩は、「今、自分は何かを感じている」「何かを考えている」と気づくことです。仕事中に漠然とした不安を感じたり、休憩中にネガティブな考えが浮かんできたりした時に、「あ、今、不安を感じているな」「あ、今、将来のことを考えているな」と、その心の動きに意識を向けてみましょう。

ヒント2:「~と感じている」「~と考えている」とラベル付けする

心の中で浮かんだ感情や思考に対し、「私は不安だ」ではなく、「私は不安を感じている」。「この仕事は失敗するだろう」ではなく、「私はこの仕事が失敗するかもしれないと考えている」のように、「~と感じている」「~と考えている」という言葉を付け加えてみましょう。これにより、感情や思考と自分自身の間にわずかな距離が生まれ、客観性が増します。

ヒント3:呼吸に意識を向ける時間を作る

数分でも構いませんので、静かな場所で座り、ご自身の呼吸に意識を向けてみましょう。吸う息、吐く息にただ注意を向けます。その間に、様々な考えや感情が浮かんでくることに気づくかもしれません。その際、それらを追いかけたり、良い悪いと判断したりせず、「あ、考えが浮かんだな」「あ、感情が湧いてきたな」と認識し、再び呼吸に意識を戻す練習をします。これは「マインドフルネス」の基本的な練習の一つであり、心の動きを観察する力を養います。

ヒント4:頭の中を「書いてみる」

頭の中で考えがまとまらない時や、特定の感情から抜け出せないと感じる時、紙やノート、またはスマートフォンのメモ機能などに、今頭に浮かんでいることや感じていることをそのまま書き出してみましょう。誰に見せるわけでもなく、ただ正直に書き出すことで、頭の中が整理されるだけでなく、書かれた自分の考えや感情を後から読み返し、「ああ、自分はこんな風に考えていたんだな」と客観的に捉えることができる場合があります。

実践のポイント:無理なく、継続すること

感情や思考を客観的に捉える練習は、すぐに完璧にできるものではありません。また、すべての感情や思考に対して常に客観的である必要もありません。大切なのは、「こういう考え方もあるんだな」と知り、ご自身のペースで少しずつ日常に取り入れてみることです。

例えば、一日に数回、数秒間だけ立ち止まって自分の心の状態に気づくことから始めても構いません。あるいは、夜寝る前に数分間だけ呼吸に意識を向ける時間を作ってみるのも良いでしょう。

完璧を目指さず、ご自身の心に寄り添いながら、こうした練習を無理なく継続することが、心の安定につながる一歩となります。

まとめ:自己理解を深め、心の負担を軽くするために

感情や思考を客観的に捉えることは、難しい状況やネガティブな心の状態に直面した際に、それに飲み込まれるのではなく、一歩引いて冷静に向き合うための有効な方法です。

それは、自分自身の心の動きをより深く理解することにつながり、自分を責める気持ちを和らげ、心の負担を軽くしていく助けとなります。

もし、こうした心のあり方に興味を持たれたり、ご自身で実践することが難しいと感じたりする場合は、オンラインでのカウンセリングや専門家への相談も検討されてみるのも良いかもしれません。オンラインであれば、ご自身の都合の良い時間に、匿名性を保ちながら専門的なサポートを得ることができます。

ご自身の心の声に耳を傾け、穏やかな毎日を送るための一つのヒントとして、この「客観的に捉える」という視点を、ぜひ日常に取り入れてみてください。