「もし〇〇になったらどうしよう」最悪の事態を考えてしまう癖と向き合うヒント
なぜかいつも最悪の事態を考えてしまう
仕事やプライベートで何か新しいことを始めようとしたり、あるいは特に何もなくても、頭の中に「もし失敗したらどうしよう」「こんなことになったら最悪だ」といった不安な考えが浮かんでくることはありませんか。考え出すと止まらず、まだ起こってもいないことに対して、強い不安や恐怖を感じてしまうかもしれません。
このような思考パターンは、多くの人が経験することです。しかし、それが習慣化してしまうと、常に心が落ち着かず、新しい挑戦への意欲が失われたり、些細なことにも過剰に反応して疲弊したりすることがあります。
なぜ私たちは、良い可能性よりも悪い可能性、特に最悪の事態を考えてしまうことがあるのでしょうか。そして、その思考の癖にどう向き合えば良いのでしょうか。
最悪の事態を考えてしまうメカニズム
最悪の事態を考えてしまう背景には、いくつかの要因が考えられます。
不安を感じやすい性質
元々、少し心配性だったり、物事を深く考えたりする傾向がある場合、自然とリスクや危険を予測しようとすることがあります。これは、予期せぬ事態に備えようとする人間の防御本能の一部とも言えます。しかし、この予測がネガティブな方向ばかりに向かってしまうと、過剰な不安につながります。
過去の経験
過去に辛い経験や失敗、裏切りなどを体験したことがあると、「次も同じようなことが起こるかもしれない」という考えが強くなることがあります。過去のネガティブな出来事が、未来に対する予測に強く影響を与えてしまうのです。
不確実性への対処
未来は不確実であり、私たちは完全にコントロールすることはできません。この不確実さからくる不安を和らげようとして、「起こりうる最悪の事態」を想定し、それに対する心の準備をすることで、かえって安心感を得ようとすることがあります。しかし、実際にはこの思考がさらなる不安を呼び起こすことが多いです。
思考の癖(認知の歪み)
考え方のパターンとして、「破局化」(Catastrophizing)と呼ばれるものがあります。これは、小さな問題を非常に大きく、取り返しのつかない最悪の事態だと捉えてしまう傾向です。「もしこれがうまくいかなかったら、すべてがダメになる」のように、極端な結論を導き出してしまいます。このような思考の癖が、意識しないうちに最悪のシナリオを繰り返し思い描かせてしまうことがあります。
最悪の事態を考える癖がもたらす影響
常に最悪の事態を想定していると、心身に様々な影響が現れることがあります。
- 不安やストレスの増大: まだ起こってもいない未来の出来事に対して継続的に不安を感じるため、心が休まる時間がなくなり、常に緊張状態に置かれます。
- 行動の抑制: 「どうせうまくいかないだろう」「失敗したら最悪だ」といった考えが、新しいことに挑戦する意欲を削ぎ、行動をためらわせてしまいます。
- 精神的疲労: 常にネガティブな可能性を考え続けることは、想像以上に多くのエネルギーを消費します。これにより、集中力の低下や疲労感につながることがあります。
- 現実の無視: 最悪のシナリオに囚われるあまり、今この瞬間の良い点や、実際にはそこまで悪くない現実を見過ごしてしまうことがあります。
不安な思考の癖と向き合うヒント
このような思考パターンに気づき、少しずつ向き合っていくことは可能です。ここではいくつかのヒントをご紹介します。
1. 思考の癖に「気づく」練習をする
まず大切なのは、「あ、今また最悪のことを考えているな」と、自分の思考パターンに気づくことです。頭に考えが浮かんできても、すぐにその内容にのめり込まず、一歩引いて「これは単なる思考だな」と客観的に観察する練習をします。マインドフルネスの考え方が役立ちます。
2. 思考を「現実」と区別する
頭の中で思い描く最悪の事態は、「可能性の一つ」であって「現実」ではありません。不安な考えが浮かんだら、「これは起こりうる可能性の一つだ」と心の中で唱え、それが現実ではないことを意識的に区別するようにします。
3. 不安な考えを「書き出す」
頭の中でぐるぐる考えているだけでは、考えがさらに複雑になることがあります。ノートやメモ帳に、今不安に思っていること、最悪だと考えているシナリオを具体的に書き出してみてください。書き出すことで、考えが整理され、客観的に捉えやすくなることがあります。書き出してみると、「意外と大したことないかもしれない」「これは現実的ではないな」と気づくこともあります。
4. 「現実的な可能性」も考えてみる
最悪のシナリオだけでなく、「最も可能性が高い結果」や「最良の結果」など、他の可能性についても考えてみましょう。意識的に異なる視点を持つことで、一つのネガティブな考えに固執することを避けることができます。
5. 「今できること」に焦点を当てる
未来の不確実な出来事について悩むのではなく、今この瞬間に焦点を当て、「今日できること」「今、自分がコントロールできること」に意識を向けます。小さな一歩でも、行動を起こすことで、無力感を減らし、不安を和らげることができます。
6. セルフケアを取り入れる
深い呼吸、軽い運動、好きな音楽を聴く、趣味の時間を持つなど、心身のリラックスを促す活動は、不安な思考から離れる助けになります。自分にとって心地よいセルフケアを見つけて、日常生活に取り入れてみてください。
一人で抱え込まず、オンラインでサポートを探す
自分でできるセルフケアを試しても、なかなか不安な思考パターンが変わらない、あるいはそれが原因で日常生活に支障が出ていると感じる場合、一人で抱え込まずに外部のサポートを検討することも大切です。
「専門機関に相談するのは敷居が高い」と感じる方にとって、オンラインで利用できるメンタルヘルスサポートは有効な選択肢となります。
- オンラインカウンセリング: 専門のカウンセラーとオンラインで対話し、自分の思考パターンについて相談できます。なぜ最悪の事態を考えてしまうのか、その背景を理解し、思考の癖を修正するための具体的な方法についてアドバイスを得られることがあります。自宅などリラックスできる場所から、匿名で利用できるサービスもあります。
- メンタルヘルス関連の情報サイトやアプリ: 認知行動療法(CBT)に基づいた思考記録の方法や、不安を和らげるためのエクササイズなど、セルフケアに関する具体的な情報を得るのに役立ちます。
オンラインでのサポートは、自分のペースで情報を集めたり、必要に応じて専門家と繋がったりするための最初の一歩として有効です。
まとめ
「もし〇〇になったらどうしよう」と最悪の事態を考えてしまう癖は、不安を感じやすい方にとって辛いものです。しかし、それはあなたの性格すべてを決めるものではなく、向き合い方を変えることで少しずつ心を軽くしていくことが可能です。
まずは自分の思考パターンに気づき、それが「現実」ではなく「可能性」であることを意識することから始めてみましょう。不安な考えを書き出したり、今できることに焦点を当てたりするセルフケアも有効です。
もし一人での対処が難しいと感じたら、オンラインで利用できるカウンセリングや情報リソースも活用してみてください。自分に合った方法で、不安な思考パターンと向き合い、少しでも穏やかな毎日を送るためのヒントを見つけていただけたら幸いです。